音が小さく聞こえる症状で困っていませんか?それは伝音難聴という病気かもしれません。難聴は治らないと思われがちですが、伝音難聴は治療をすれば治る可能性が十分にあります。
この記事では、伝音難聴と感音性難聴との違いや、具体的な症状・治療方法についてわかりやすく解説します。
「伝音難聴」とは外耳・中耳の異常によって生じる病気
伝音難聴とは、外耳または中耳の異常によっておきる難聴のことで、音が小さく聞こえる病気です。音の振動を伝達する役割をしている外耳・中耳が機能しなくなるため、大きな音でないと聞こえなくなります。
伝音難聴の原因は、慢性中耳炎や滲出性中耳炎などの中耳の病気によって、中耳腔の気圧の調整や粘液を排出できなくなることで引き起こされる場合が多いです。
難聴と聞くと高齢者がなるものというイメージがありますが、大人から子供まで幅広い年齢で発症する可能性があります。
感音性難聴との違い
感音性難聴と伝音難聴の大きな違いは、原因となる耳の構造部位です。
伝音難聴は外耳や中耳に異常がおき、感音性難聴は内耳や耳神経に異常がおきます。
耳は外耳・中耳・内耳の3つに分かれています。外耳は音を集めて鼓膜まで伝える、中耳は伝わってきた音を振動させ大きくする、内耳は音の信号をキャッチし電気信号に変換して脳に伝える役割があり、この3つが連携することで音が聞こえるのです。
伝音難聴は外耳や中耳に異常がおき、音を集めて大きくすることができないので、小さな音が聞こえません。感音性難聴は内耳や耳神経に異常がおき、伝わってきた音の信号を上手にキャッチできず脳に伝えられないため、高音域の音が聞こえにくく、聞き分けるのが難しくなります。
伝音難聴は原因が特定できれば回復が期待できますが、感音性難聴は治療での回復が難しいです。
感音性難聴について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
>> 聞こえにくさは感音性難聴の可能性あり!聞こえ方や原因、補聴器による治療について詳しく解説
伝音難聴の具体的な症状
伝音難聴の症状は以下の通りです。難聴以外にもさまざまな症状を感じる場合があります。
・痛み:外耳炎・中耳炎による痛みが多いです。ズキズキする痛みがあり、耳の入り口側の痛みは外耳炎、奥が痛ければ中耳炎の可能性があります。
・耳の閉塞感・音のこもり:耳が塞がっている感じがしたり、音がこもるため自分の声が大きく聞こえたりすることがあります。なんらかの影響で耳管が塞がれ、中耳腔の気圧の調整が出来なくなるからです。
・耳だれ:耳から出てくる分泌物のことをいいます。さらさらしたもの、粘り気があるもの、膿が混じったものなど性状はさまざまです。耳に痛みがあって、膿が混じった耳だれが出る場合は中耳炎による症状が疑われます。
・両耳の聴力が異なる:伝音難聴は片耳だけかかることもあるため、片方の耳だけ聞こえにくい場合があります。
・耳鳴り:普通は聞こえない、「キーン」や「ゴー」という音や「ブチブチ」「ポンポン」などの異常な音が耳の中で聞こえる場合があります。人によって耳鳴りの音は違います。
伝音難聴の原因は大きく分けて4つ
伝音難聴の原因は大きく分けて、閉塞・損傷・疾患・機能障害の4つです。外耳、中耳、耳管など障害される部位がそれぞれ違い、役割が果たせなくなるため、伝音難聴につながります。
閉塞
耳垢のつまりや、耳の中に押し込まれた異物が原因で閉塞します。外耳道が閉塞すると音を集めて鼓膜まで伝えるという役割が果たせず、伝音難聴の原因となります。
損傷
鼓膜に穴が開く場合や中耳炎などの感染症、急激な気圧の変化によって引き起こされる鼓膜の気圧外傷などが損傷する原因です。鼓膜が損傷すると伝わった音を振動させて大きくするという役割が果たせず、伝音難聴と感音性難聴の両方の原因となります。
疾患
原因となる疾患には、滲出性中耳炎、耳小骨奇形・離断、真珠腫性中耳炎などが挙げられます。
滲出性中耳炎
鼓膜の内側の中耳に液体が溜まり、音の伝わりが悪くなる病気です。
耳と鼻をつなぎ、気圧の調整や粘液を排出する役割を担っている部位を耳管といいます。滲出性中耳炎では、加齢により耳管の機能が低下することや、感染や腫瘍により増えた分泌物が溜まることで音が伝わりにくくなり、伝音難聴の原因となります。
耳小骨奇形・耳小骨離断
鼓膜の奥にある中耳腔には、音を伝えるのに重要な耳小骨(じしょうこつ)が3つあります。この耳小骨に先天的な奇形や離断があると、鼓膜から内耳への音の伝わりが悪くなるため、伝音難聴の原因となります。
真珠腫性中耳炎
鼓膜表面の皮膚の成分が中耳腔に入り込んで、真珠腫という白色の塊を形成する病気です。真珠腫は細菌に感染して炎症を起こすと、骨や周囲の組織を破壊しながら大きくなります。鼓膜が音を正常に伝達できなくなることや、耳小骨が破壊されることが伝音難聴の原因となります。
機能障害
耳と鼻をつないでいる耳管の働きが悪くなってしまい、耳管が狭くなったり、反対に開いたままになったりするなどの機能障害も伝音難聴の原因です。
耳管が狭くなる原因に風邪や副鼻腔炎、咽頭扁桃肥大があり、耳管が開いたままになる原因に急激な体重の減少、ストレスによるホルモンバランスの崩れが挙げられます。
伝音難聴の治療方法
伝音難聴の治療は、伝音難聴がおこっている場所や原因によって異なります。投薬治療で改善しなければ、外科的手術をする場合もあります。外科的手術が適応とならない場合や改善が見られない場合は、補聴器を使うことも検討しましょう。まずは、耳鼻咽喉科に受診して診断をしてもらうことが大切です。
補聴器を使う
伝音難聴は外耳や中耳に異常がおき、音を集められず、伝わってきた音を大きくできないため音が小さく聞こえます。音を聞き取りやすくするためには補聴器の使用が効果的です。補聴器を使って聴力を補うことで、難聴によるコミュニケーション障害を予防します。
補聴器には、耳掛け型、耳あな型、ポケット型などさまざまなタイプがあります。価格帯もさまざまで、自分に適した補聴器を選択することが大切です。
補聴器の種類や価格についてくわしく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
>> 補聴器の値段は高い?安い?タイプ別相場や購入時の補助金制度について分かりやすく解説
原因となる疾患を治す
伝音難聴の原因となる疾患には、耳垢塞栓、急性中耳炎、慢性中耳炎、滲出性中耳炎、鼓室硬化症、耳硬化症などが挙げられます。
耳垢塞栓では、耳に溜まった耳垢や外耳道内にある異物を除去します。
中耳炎は、中耳に細菌やウイルスが入ることで炎症を起こし、膿が溜まる病気です。炎症を抑えるために抗生剤を投与しますが、それでも症状が改善しなければ鼓膜を切開して膿を出す治療を行う場合があります。
鼓室硬化症、耳硬化症では投薬治療での改善は難しいため、外科的手術を検討します。
手術を受ける
伝音難聴の治療方法には外科的手術もあり、投薬治療をしても症状の改善が見られない場合や、補聴器を使っても聞こえづらい場合に検討します。難聴の程度や重症度だけでなく、ご自身の希望と手術で得られるメリットを医師ときちんと話し合ってから、手術を行うか決めましょう。
手術には、鼓室形成術、鼓膜形成術、あぶみ骨手術、人工聴覚器などがあります。
鼓室形成手術
鼓室形成手術は、人工耳小骨や患者さん自身の骨や軟骨を使って耳小骨を再建し、音の伝わりを改善する手術です。真珠腫性中耳炎、慢性中耳炎、鼓室硬化症、耳小骨奇形・耳小骨離断などの病気が、この手術の適応です。
鼓室形成手術は、全身麻酔で行われるため入院が必要で、入院期間は10日前後となります。感染症などの合併症を起こすと、退院がのびる可能性もあります。
鼓膜形成手術
鼓膜形成手術は、鼓膜が再生するよう、患者さん自身の軟骨を破れた鼓膜の穴の付近に移植して、音の伝わりを改善する手術です。慢性中耳炎や鼓膜外傷により鼓膜の穴が塞がらない場合は、この手術が適応となります。
鼓膜形成手術は局所麻酔で行われることが多く、入院は不要な場合が多いです。
あぶみ骨手術
あぶみ骨手術は、動きが悪くなったあぶみ骨を人工耳小骨に置き換え、音の伝わりを改善する手術です。耳硬化症、耳小骨奇形の一種である先天性あぶみ骨固症、鼓室硬化症などの病気が、この手術の適応となります。
あぶみ骨手術は、全身麻酔で行われるため入院が必要です。術後にめまいを起こすことがあるので、入院期間は4〜5日必要となります。
人工聴覚器
人工聴覚器とは、人工内耳、人工中耳、植え込み型骨導補聴器のことをいいます。手術で補聴器を植え込むことで聴力の改善を図ります。自身の耳でほとんど音を認識できない重度難聴、高度難聴以上の難聴があり、補聴器を使っても言葉の聞き取りができない場合が手術の適応です。
この3つの手術は全て全身麻酔で行われるため入院が必要で、入院期間は7〜10日となります。
聞こえにくさを感じたら耳鼻咽頭科を受診しよう
伝音難聴とは、外耳または中耳の異常によっておきる難聴のことで、音が小さく聞こえる病気です。聴力低下以外にも、痛みや耳だれ、耳鳴りなどの症状が起こる場合もあります。治療方法は原因となる場所によってさまざまですが、手術が必要になる可能性もあります。
聞こえにくさや耳の痛み、耳だれなどの症状がある場合は、専門の耳鼻咽喉科にご相談ください。